刺繍編1 萩らしからぬ萩

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刺繍というのは、ご存知かとは思いますが、手刺繍とミシン刺繍があります。
手とミシンの違いというか、見分け方はいろいろありますが、簡単に見分ける方法は、生地の裏を見る方法です。
手刺繍というのは、一本の縫い針に生糸を通して、生地に刺していきます。
当然、裏も表も同じ糸が行き交います。
そう考えると、生地の裏の刺繍糸も色糸なのです。
いっぽう、ミシン刺繍のほうは、上糸は、色糸を使いますが下糸は白糸を使います。
そうなると、当然、生地の裏の糸は白糸なのです。
だから、生地の裏を見ると一目瞭然なのです。
但し、近年、下糸を色糸で縫ったものを見るようになりましたが、これも生地の裏を見ると、よくわかります。
なにを見るかというと、裏糸のさばきというか、止めが人間臭いのです。もしも、生地の裏が見られない状態で、手かミシンかを判別するには、刺繍糸の厚みを見てください。
手刺繍、特に京刺繍は、あまり嵩が高くなりません。
反対にミシンはとても厚みがあります。
さて、京刺繍というのは、読んで字の如しの京都の刺繍なのですが、最近は京都ではなく、中国で行なわれている刺繍も少なくありません。
今までは、蘇州刺繍とか汕頭刺繍とかで、いかにも中国刺繍の顔をしていたのですが、京刺繍の刺繍法で刺した着物を多く見られるようになりました。
もちろん、中国の刺繍職人の技は素晴らしいものがあるので、私はどうのこうの言うつもりはありません。
中国と日本との所得水準の違いがコストに反映され、消費者が日本の刺繍に比べて、比較的安い価格で素晴らしい刺繍の着物を手に入れられることは悪いことではありません。
ただひとつ、気になるのは、この文様は萩なのですが、すこし萩らしからぬ葉をしています。
中国の人が刺したから、とんがった葉っぱになったのか、それとも、萩の葉っぱの本当の姿を知らないから、こういう葉っぱになったのか、どうなのでしょうか?
ところで、私たちは刺繍のことを縫、もしくは繍と書いて、「ぬい」と呼びます。
どうですか、玄人っぽい言い方でしょう?
あなたがたも、これからは、刺繍のことを「繍(ぬい)」と呼びましょうね。
さて、写真の刺繍は、袖の部分です。
一番右の葉の部分の繍は、金駒(きんこま)の平埋め(ひらうめ)です。
すすきのような細い葉は金糸のまつい繍(書籍などを見ると、まつり繍と書いてあるのですが、ついつい私はまつい繍と言ってしまいます。どちらが正しいのでしょう。)です。
金駒の葉の下には、平繍で、葉脈はまつい繍、その上には平繍の上にさらに疋田繍(ひったぬい)が施されています。
花の部分は、平繍です。
この仕事を見ていると、どこで刺されたかなど、どうでも良いことに思えてきます。
いくら見ていても、飽きが来ないですね。
では、次の項では、この繍の裏側をみなさんに見ていただきましょう。






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