51 地空き飛び柄考




(ご案内) 本文をお読みになる前に


もし、あなたが呉服専門店で経緯絣の大島紬を


買おうとなさっているかたでしたら、


下の文章はどうか、読まないでください。


こういう知識は知らなくていいと思います。


なぜなら、ネガティブな知識が含まれているからです。


 次へをクリックしてくださいね。


でも、もし、専門店じゃない呉服屋さんやネットオークションなどで、


なんの説明も受けず、もしくは誤った説明を受けて買われる場合は、


知識として持っているのも悪くないのではないかと考えます。








さて、みなさんは、「地空き飛び柄」の大島ってご存知ですか?


「じあきとびがら」と読みます。


大島紬には、柄以外の部分、つまり、地(じ)の部分ですね、


その地の部分の様子をみっつに分けています。


すなわち、「地詰まり」(じづまり)


「半地空き」(はんじあき)


「地空き」(じあき)という具合に。



「地詰まり」というのは、地の部分に


Tの字絣がびっしりと織り込まれているものです。


非常に、織るほうの人にとっては、


骨の折れる地絣(じがすり)表現となります。


また、「半地空き」というのは、半分がた、地詰まりで、


半分がた、地空きを、言います。


絣合わせをしなければいけない織り工さんにとっては、


すこしは、目の健康にはいいかもしれません。


最後に、「地空き」というのは、それが泥大島なら、


一面、真っ黒の地になっています。


絣合わせをするという観点から見ると、


ある意味、目の健康にはよいと思います。



地空き飛び柄というのは、その真っ黒の地に


飛び柄が配されている、、、


そういう模様の大島を「地空き飛び柄」といいます。


ただ、ひとつ、地空き飛び柄を織る織り工さんの名誉のために、


書かせていただきますが、すくなくとも、


簡単な織りの大島ではありません。


なぜなら、経緯絣の大島の経糸(たていと)は最初から


機(はた)にかけられています。


そして、当然のことながら、経絣(たてがすり)糸も所定の位置に


鎮座しているわけです。


その鎮座している経絣(たてがすり)糸と緯絣(よこがすり)糸が


交差してはじめて、経緯絣としての模様ができあがるのです。


よく譬えに使われるのが、「ヘッドライトをつけずに闇夜を


ドライブするようなものだ」というのは、


よく聞かれるんじゃないでしょうか?。


僕の感覚では、「目隠しをして、クルマで会社から家まで


帰るようなものだと思います。」


目隠しをしたドライバー(緯絣糸)は家(経絣糸)である飛び柄に


会うまでは、どこを走っているか、さっぱり、


わから〜ん状態なのですから。(笑)


ですから、織り工さんは、平常心で、ずっと同じ調子で


杼(ひ)を投げ、筬を打ち続けなければいけません。


これは、とても、しんどいことです。


誰にでも、できることではありません。


ですから、産地には、地空き飛び柄専門の織り工さんが


いらっしゃるぐらいなのです。


すっかり、脇道に入り込んでしまいました。


どこまでというか、なにを書いていたのか、


わからなくなってしまいました。(笑)


最初のワンフレーズを書き直して、そこから、話を進めましょう。





さて、みなさんは、「地空き飛び柄」の大島ってご存知ですか?


たぶん、ご存知でしょう。


お持ちのかたもいらっしゃるかもしれません。


さて、この地空き飛び柄の大島、


実はふたつのバージョンがあります。


ひとつのバージョンは、鹿児島産、


もうひとつのバージョンは奄美産です。


このふたつのバージョン、よく似ているのですが、


中身は相当な違いがあります。


今日はそれを視覚的に理解していただけるように


解説して行こうと思います。


では、ここで、ふたつの大島紬を紹介しておきましょう。


左が鹿児島産の地空き飛び柄9マルキカタス式、


右が奄美産の同じく地空き飛び柄9マルキカタス式の大島紬です。


両者とも、手織りの泥大島です。


  


鹿児島産 地空き飛び柄     奄美産 地空き飛び柄



さて、ここで、両者の価格差について、述べましょう。


ま、だいたいのところ、2倍の開きがあるように思います。


この強烈な価格差によって、


鹿児島の地空き大島は衰退の憂き目にあいました。


両者とも、飛び柄ではありますが、


経糸の絣糸(かすりいと)と地糸(じいと)の配列は、


9マルキカタス式です。


絣糸というのは、黒白の糸であり、


地糸というのは、黒一色の糸のことです。


9マルキカタス式の経糸の配列は、


絣糸1、地糸2の 、2、、2であり、

緯糸は絣糸2、地糸1の 、1、、1であります。


では、両者の絣糸の配列をご覧ください。


   


鹿児島産 9マルキ カタス式   奄美産 9マルキ カタス式

15.5算                 13算



両者ともに、確かに、9マルキ カタス式の配列で


織られていますね。


さて、見た目にはそれほどの違いがあるとは思えない両者ですが、


なにゆえ、これほどの価格差が存在するのでしょうか?


算数(よみすう)の加減もありますが、決定的な違いは、、、


それは、柄の大きさなのです。


柄が大きいと、絣糸が多くなり、締機(しめばた)に


要する費用も高くなります。


その点は、刺繍の工賃によく似ているかもしれませんね。


刺繍を入れるとき、刺繍の大きさで工賃は決まるのですから。


両者の柄の大きさ・嵩(かさ)を見比べてください。


   


鹿児島産         奄美産


いかがでしょうか?


その大きさ・嵩(かさ)において、


三倍では利かないくらいの差があるでしょう?


さて、世の中に、「値段なり」という言葉がありますが、


これらの大島も値段なりということが言えるかと思います。


どこかの展示会なりネットでなり、こういう大島をごらんになったとき、


ああ、これはこういう理由で高いのよ、とか安いのよという判断基準を


お持ちくださることを願います。




では、またね。(旅)




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