53 大島は鮮度が命






さて、前回、「大島のかほり」という短文を書きましたが、


今日はその続編みたいなものです。


表題の「大島は鮮度が命」って、


まるで、生鮮食品のような表現で驚かれたかもしれませんね。


「大島」とひと括りに言ってしまいましたが、


正確には、「泥大島は特に、鮮度が命!」なのです。


この結論に至ったのは、あることがきっかけでした。


いまから、さかのぼること2年、


そう、ちょうど2年前の2004年の4月のことでした。


(いまが、2020年ですので、ずいぶん、時が経ちました。歳取るはずです。)


ある方が、大島紬プロジェクトの趣旨に賛成してくださり、


9マルキの泥大島を買ってくださいました。


その方は、米国在住のかたで、泥大島の湯通しを終えて、


米国へ持って帰られるには、日程上、少々、きびしいものがありました。


すぐに仕立てるつもりはないとのことでしたし、湯通しをしてしまうと、


それこそ、「大島の甘いかほり」が飛んでしまうので、


「それでは、すこしのあいだ、大島の甘い香りを


米国で楽しんでください」ということになりました。


「でも、あまり、長い期間、湯通しをせずに、糊をくっつけたまま、


保管されるのは、よくないので、できるだけ早く、


日本へ送ってくださいね。」と、念押しもしておきました。


そうして、2年の歳月が経ってしまいました。


米国の運送事情はすごく悪いそうで、危なくって、


米国から日本へ品物を送ることなどできないそうです。


今回、その方のお身内の方が、日本へ帰国する際に、


手荷物のなかに入れて、やっと、里帰りできたという次第なのです。


そうして、先月、つまり、2006年の3月にその娘(泥大島のことです)は、


我が家に帰ってきたのです。


さっそく、箱から出してやって、「やぁ、ひさしぶりやったなぁ」(笑)と、


つぶやきつつ、反物に触れたとき、「え?」と、感じました。


なにが、「え?」なのかというと、やけに、反物がぱさついているのです。


ぱさぱさしているのです。


「なんやろ?このパサパサ感は?」


「これは、ゆっくりしておられんわ」と、すぐさま、湯通しをやりかけました。


もう、あんまり、時間が残されていないと感じましたので。


湯通しをしているとね、いつもの湯通しとは感じが違うのです。


なかなか、糊が溶け出さないというか、


糊の固まりかたが尋常じゃないというか、


普通の工程では、満足できない仕上がりなのです。


何回も何回もやっているうちに、まずまず、満足できる仕上がりには、なりました。


いやぁ、これでまずはひと安心と、ほっとしましたよ。


それから、どうして、こんなにパサパサした大島になったのだろうかと、


原因究明に乗り出しました。


まず、気候風土について、考えました。


その方は、米国は、カリフォルニア州に


住んでおられるかただったので、かの地はよほど、


乾燥地帯なのであろうか、と考えました。


(ほんとのところは、どうなのかは、わかんないのですが、、、)


次に、この泥大島は、いつごろ、この世におぎゃあと生まれたのだろうか、と。


そこで、、目の前の電話をつかんで、僕は鹿児島の織り元に電話をしました。


「もしもし、、、、、、、、(中略)、、、、、、、、


○○○という柄名の泥大島ですが、これは、いつ、織り上がったものですか?」


「それは、2003年7月に織り上がっていますよ」


「どうも、ありがとう」


2003年7月に織り上がって半年ほどして、我が家に来て、


そのあと、2004年の4月に嫁に行って(お買い上げいただいて)、


里帰りしたのが2006年の3月、つまり、織り上がって3年弱という歳月が


経っているのです。


そのあいだ、ずっと、糊をくっつけたままだったわけです。


「え〜?!たった、3年弱でぱさついてしまうの〜?」と、


ある意味、驚愕の結果だったのです。


それで、まー、カリフォルニアが乾燥地帯なのかもしれないし、


カリフォルニアには、桐の箪笥もないかもしれないし、


(保存状態が悪かったのかもしれないし)、今回のケースは、特殊なケースだったのだと


安易に結論づけたのです。


ところが、ところが、この結論はマチガイであったことが、


すぐにわかったのです。


ある日、鹿児島から新しい娘(泥大島)が来ました。


何反かのうちのひとつが、ずいぶんまえに


見たことのある大島だったのです。


僕はまた、電話をしました。


「もしもし、、、、、、(中略)、、、、、、、、


今日、来た大島紬なのですが、ひとつだけ、ぱさぱさしていたのですが、


これは、だいぶん、織ってからの時間が経ってるんじゃないですか?」と。


「え?どの大島ですか?」


「○○という名前の大島です。これは、いつ、織り上がったのですか?」


「ちょっと、待ってくださいよ、ありゃりゃ、、、、、、沈黙」


「いつ、織り上がったんですか?言ってごらんなさい」


「言いたくないです、、、、」


「言うてみよし、おこらへんしー」


「えーとですね、2002年の12月です。


古いのを送ってすみません」


「いえいえ、いいですよ。とても、重要なことが、わかってしまいましたから。


ほんまは、うれしいですよ。」


このぱさぱさした泥大島は、即日、鹿児島に


帰ったのは、言うまでもありませんが、


ほんとに、今回は良い勉強をさせてもらいました。


いままででも、織り上がって時間が経てば、


大島は悪くなるというのは、経験上、わかっていましたが、


では、どれくらいの時間経過で悪くなるのかまでは、


全然、わかっていませんでした。


カリフォルニアで保管していても、日本で保管していても、どちらも、


同じぐらいの経年変化を来たすことがわかったのです。


泥大島は、織り上がって、3年経つと、ぱさぱさになるのです。


大島紬は、鮮度が命!


泥大島の鮮度(とろっとした風合い)を保つには、織り上がってから、できるだけ早く


湯通し(糊落とし)をしなければいけない、、、旅さんはそう考えます。


ですので、旅さんのオリジナル大島紬3部作は、織り上がってすぐに、


湯通しをしています。


おかげで、何年経っても、織り上がったときのままの風合いを保っています。


皆さんも、どうぞ、新鮮な大島紬を買われて、ほんとの大島紬の風合いを楽しんでくださいね。


では、またね。(旅)




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