10 着物の水先案内人


「旅から旅です。」
この言葉から私の語りはいつも始まります。
このサイトに来られたひとは、私のことをご存知の方もおられれば、ご存知でない方もおいででしょう。
私は、某ネットオークションの呉服屋さんの掲示板にも出没します。そして、そこで着物に関するあらゆる質問や疑問に、誰にでもわかりやすい言葉で語りかけます。
人々は、私がどうしてそんなことをするのかを不思議に思われることでしょうね。私は着物を扱う仕事をしています。
そして誰よりも着物が好きです。そして、着物が好きな女性がもっと好きです。そういう女性の助けになれればいいな、と思っています。そもそも、着物の知識などというものは、母から娘へと何代も伝えられていくものなのですが、どうも、ひとつの世代でそのバトンタッチがうまくいってないようなのです。今でも、鮮烈に思い出すのは、こういう風景です。
もう十数年前になるでしょうか。ある京都の老舗百貨店の呉服部主催の展示会でのことでした。ワゴンセールっていうんですか、掘り出し物のコーナーで丸巻きの付下着尺を挟んで、母と娘と販売員がその反物の巻きの外側を見て、なにやら話しをしていました。
娘「きれいな色ねぇ。」
母「ほんと、いい色ねぇ。」
販売員「素晴らしい色でしょう?」と言っていました。でも、そのひとたちの見ていたのは反物の裏でした。丸巻きの着尺の表裏は中に巻き込むのが表と言うのは常識なのです。なぜなら、表が汚れるより、裏が汚れるほうがマシだからです。でも、そのお母さんは、その常識すら知らなかったのです。私の言うバトンタッチができていないというのは、そのお母さんなのです。そして、そのお母さんの娘さんも当然、駄目でしょうね。そのとき、私が思ったのは、誰かがお節介な着物を良く知ってるおばあちゃんにならなければいけない、と。
そして、今、ネット社会になり、男の私が、お節介焼きのおばあちゃんになっている次第です。そのことを、あるメル友に話したら、おばあちゃんじゃなくて、「小粋な気難しいおじさん」のほうがいいよって言われました。その路線も悪くないなと思っている今日この頃です。
ところで、先ほどの着物の販売員のことですが、彼の態度をみなさんはどう感じられたでしょうか?彼もまた無知なるがゆえに裏を見て、素晴らしい色だと言ったのでしょうか?それとも、お客が買いそうだからダンマリを決めこもうとしたのでしょうか?一体、どちらでしょうね?
そういうわけで、私は着物の水先案内人になることにしたのです。着物のことはすごく好きなんだけれど、着物のことをよく知らない、そういうひとはここに来てください。私の知っていることは何もかも、教えましょう。どんなことでも、いいのです。私に自分の疑問をぶつけてください。あなたが、おばあちゃんやお母さんに教わらなかったことを、わかりやすく教えてあげますよ。そして、私のような水先案内人よりも深いところ、広いところ(着物の世界の)へ貴方が行くようになることを心から願っています。そのときには、あなたは、このサイトを卒業して、また新たなところで勉強してください。
では、またね。(旅)

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