32 ふわふわの地糸をさわると、幸福感にひたれる






これは、本場大島紬に使われる地糸(じいと)です。

車輪梅の煎液で何回も染めては洗い、染めては洗いをし、

石灰を媒染剤に使い、泥田に漬けては、また、

染めるを繰り返すうちに、糸はこなされ、しごかれ、

セリシンが剥がれ落ちていきます。

参考ページは、大島紬といえば、泥染め

この糸をさわるとね、「ふわふわ」なのです。

手の平で包みこむように握ると、幸福感にひたれます。

乾いているのに、しっとりしていて、艶がある。

そういう糸造りを大島紬はしているのです。

泥染めというのは、久米島でも行なわれていますが、

媒染に石灰を使うのは、大島紬だけなのです。

よく、大島の糸は結城の手紡ぎ糸と比べられ、

さも、絹糸であることが劣っているかのように評されますが、

まったくそれは間違っているのです。

なるほど、糸として生まれたときは、普通の絹糸であったとしても、

織り機に架けられるまでに、地糸は64回にわたって、

時には優しく、時には荒々しく人の手にかけられて、

柔らかいふわふわの地糸に生まれ変わるのです。

ここまでなめされた大島の糸は、結城の紡ぎ糸よりも

優れているのではないかと僕は思います。

もうすこし、接写してみましょう。

しっとり感がわかりづらかったので、画像処理をしてみました。




糸の表情、見えますか?

人間の手で大事になめされて、

ふわふわになった絹糸なのですよ、これは。

糸には年輪のごとく、何層も泥と石灰と車輪梅が

積み重なっています。

そして、洗い張りをするごとに、ひと皮ずつ、

その年輪がむけていくのです。

年輪がむけることによって、その輝きは増されるのです。

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